素材感や季節の飾りつけができる余白スペースを大切に
「山の中の旅館に泊まるのが好きだから、自宅でも“旅館ごっこ”がしてみたい」
そう夢を語るNさん夫妻。建築家のナカノハジメさんはその向こうに、
「四季を楽しむ余裕のある暮らし」への望みを見出し、日常の中で実現できる仕掛けを設計に盛りこんだ。
玄関にはいるとすぐ、ガラス越しに坪庭の植え込みが目に飛び込むホールは、旅館をイメージしたデザイン。
大谷石を貼った壁は、季節の草花を飾るのにちょうどいいフォーカルポイントだ。
石貼りの壁に沿って室内を進むと、小上がりの和室に突き当たる。玄関から最も遠い場所に配置したことで、落ち着きと非日常性が備わった。木の格子戸が、旅館を思わせる和モダンの雰囲気を演出し、節句ものを存分に飾れる床の間もゆとりを感じさせる。
機能面も充実した間取りだ。
直線に並ぶキッチンとダイニングテーブルの周りは回遊動線に。南側に配置された浴室はいつもカラッとしていて気持ちがいい。予想を超えた提案に、夫妻は建築家ならではの工夫を感じたそう。
「暮らしやすいうえに、家のあちこちで旅館のような贅沢さを感じます」
子どもたちが大きくなり、妻と和室でゆっくりお酒を飲めるようになる日を、今から楽しみにしている。
坪庭が見える玄関
玄関土間の開口が広いので子ども二人を並んで座らせて靴を履かせることができる。
玄関に入ると目に飛び込む坪庭の緑は、気持ちを和ませてくれる。
坪庭の足元にはモダンな建物に合わせ洋風な植物をあしらった。
動線の分かれ道
玄関から動線が二手に分かれ、右は直接キッチンへ、直進するとリビングへつながる。
玄関ホールの壁には、地元名産の大谷石を貼って、手前をしつらえのスペースに。
伸びやかさを感じるLDK
突き当りの玄関まで視線が通るので、直線距離の長さによる伸びやかさを感じられる。
鉄骨のスケルトン階段は機能性を満たしつつリビングの広さを保つ。
リビングと一体の階段吹き抜けを通してリビングの気配が二階に伝わる。
明るく家族の会話も弾むキッチン
玄関側とダイニング側、二方向からの出入りが可能。
キッチンは玄関からも近く、買い物の荷物を運び入れるのもラク。
「北側ですが明るさも十分で快適です」
セミオープンのキッチンを囲む壁は大谷石貼り。キッチンの中が丸見えにならず、顔は常に見える程よい開き加減。
リビングに隣接する和室
リビングと隣接する和室は、小上がりにかけることもできる。人が集まった時にたくさんの居場所があり使い勝手がいい。和室とリビングは、格子戸の開け閉めにより開放度を調整可能。開けるとリビングにも和風の空間がもたらされる。いつもと違ったイメージを楽しむことで気分転換に。
心が落ち着く和室
内装に木をたっぷり使った和室は、非日常性を感じられる空間。
床の間に季節の草花や節句のものを飾る楽しみが増えた。
和室からは広々とした畑の景色が見え、日々のせわしなさを忘れさせてくれる。
テラスへの出入りがスムーズになるステップ
ベンチ状になったリビングの窓辺にはステップを設けて、テラスへの出入りをスムーズに。
ちょっと腰掛けたいときにも便利に使える。
スタイリッシュな水回り
洗面、脱衣、浴室は南向き。
洗面と脱衣を別室に分け、洗面をスタイリッシュにまとめたので来客にも使ってもらいやすい。
まるで露天風呂のような景色
浴室の前庭は板塀で囲み、緑を植えた。
「お風呂に入りながら庭のモミジを眺めると、旅館に来たような気分になれます」
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