素材感や季節の飾りつけができる余白スペースを大切に
「山の中の旅館に泊まるのが好きだから、自宅でも“旅館ごっこ”がしてみたい」
そう夢を語るNさん夫妻。建築家のナカノハジメさんはその向こうに、
「四季を楽しむ余裕のある暮らし」への望みを見出し、日常の中で実現できる仕掛けを設計に盛りこんだ。
玄関にはいるとすぐ、ガラス越しに坪庭の植え込みが目に飛び込むホールは、旅館をイメージしたデザイン。
大谷石を貼った壁は、季節の草花を飾るのにちょうどいいフォーカルポイントだ。
石貼りの壁に沿って室内を進むと、小上がりの和室に突き当たる。玄関から最も遠い場所に配置したことで、落ち着きと非日常性が備わった。木の格子戸が、旅館を思わせる和モダンの雰囲気を演出し、節句ものを存分に飾れる床の間もゆとりを感じさせる。
機能面も充実した間取りだ。
直線に並ぶキッチンとダイニングテーブルの周りは回遊動線に。南側に配置された浴室はいつもカラッとしていて気持ちがいい。予想を超えた提案に、夫妻は建築家ならではの工夫を感じたそう。
「暮らしやすいうえに、家のあちこちで旅館のような贅沢さを感じます」
子どもたちが大きくなり、妻と和室でゆっくりお酒を飲めるようになる日を、今から楽しみにしている。